前回のエントリーで、世界の国際NGOの政策提言活動について、その概要を紹介しました。今回は自分が経験したひとつの具体例をご紹介します。もう2年近く前の話になりますが、2007年の秋から2008年の2月まで、ドイツのボンに本部のある国際オーガニックNGO「IFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)」で広報やマーケティングを担当するメディアフェローとして勤務しました。そのときに参加したブリュッセルで開催された国際会議について報告します。
2007年12月4日・5日の2日間に、ベルギーでIFOAM・EUグループが主催する第1回「ヨーロッパオーガニック会議」(ハインリッヒ・ベル財団後援)が開催されました。会議のテーマは『EUの共通農業政策(CAP)におけるオーガニック食品と有機農業の未来』で、サブタイトルが「ヨーロッパのオーガニック行動計画の再検討と将来展望」です。この会議は、EUの共通農業政策(CAP)を含む農政全般の責任者、欧州委員会のマリアン・フィッシャー・ボエル農業・農村振興局委員(農水大臣)をはじめ、欧州委員会の政府高官や欧州議会議員らが多数参加しました。この会議は、2007年の有機農業運動における最も重要でハイレベルな政治的イベントとして開催されました。
【欧州オーガニック会議2007の参加者】
ベルギーの老舗ベッドフォードホテルを会場に開催されたこの歴史的なヨーロッパのオーガニックセクターにおける最大規模の会議は、IFOAM(国際有機農業運動連盟)のEUグループによって開催されました。会議には、EUで中心的に活動している有機農業団体の代表者をはじめ、欧州委員会や欧州議会の政府高官や農業大臣、EU加盟国の関係官庁や関連機関、各国の国会議員、環境NGOや労働組合、消費者団体、食品加工メーカー、流通企業、有機認証団体、それに有機農業生産者など幅広い分野の関係者など約300人が参加しました。
【欧州の農業全般への政策提言活動】
現在、(定期的な)中間見直しが行われている「CAP(農業環境政策)」のヘルスチェックは、ヨーロッパの今後の農業モデルのを決めるものです。今回のIFOAMが主催する会議の目的は、「CAP」の目指すべき方向性が、「①生産物と量を作ることだけを考えて農薬や化学肥料を多用する、工業化した遺伝子組み換え技術に支配された(慣行)農業」なのか、それとも「②環境に優しく持続可能性で、質と地域性にこだわり、消費者のことを考えた有機農業を中心とする(環境保全型)農業」のどちらなのか?について、政治と行政、それに市民社会が一緒になって話し合うことです。
つまり、ヨーロッパの有機農業を1970年代から牽引してきた国際NGOであるIFOAM(国際有機農業運動連盟)のメンバーである有機農業団体の代表者たちが、欧州委員会の政策責任者たちに対して、ヨーロッパの農業政策が目指すべき方向を提案する場なのです。具体的には「土壌や地下水を汚染しない環境への便益があり、生物多様性を維持し、炭素の土中吸着やエネルギー効率が高く(地球温暖化防止への貢献)、食品への農薬残留の危険性が少なく、一般的に食品の質と栄養価を高める」有機農業ではないか、ということを提案する政策提言(アドボカシー)活動の現場なのです。
【EUの農業環境政策による有機農業振興支援】
EU(欧州連合)加盟国は、1964年に食料自給率向上などを目的に全加盟国に共通の農業政策を導入しました。それが「共通農業政策(CAP)」です。1992年に実施されたCAP改革(マクシャリー改革)では、農薬や化学肥料の使用過多による土壌や地下水の汚染によって起きた健康被害や野生動物に対する悪影響などの環境問題を改善するために『農業環境政策(EEC/2078/92)』が施行されました。具体的には、生産者が休耕や粗放化生産や環境保全プログラムへの参加を条件に環境財(公共財である健全な農村環境)を生産する為の費用が、市場から切り離して直接補償される「環境直接支払い制度」が導入されました。この施策によって有機農業や環境保全型農業への転換や継続によって被るコストと放棄した所得が補償され、1990年代以降の有機農業の発展に大きく貢献しました。
その後「農業環境政策」は、1998年のCAP改革「アジェンダ2000」で採択された「農村振興に対する欧州農業指導保証基金(EAGGF)の助成に関するEU規則(1257/1999)」によって、農業環境政策を含んだ条件不利地域の支援策と一本化された農村振興政策としてCAPの第2の柱に位置づけられました。この規則では、環境保護と農村維持の双方を合わせて農業環境とし、支援の対象としては環境と景観等の保護および向上と両立し得る農地の利用法等があげられています。具体的には、有機認証制度で認定された有機農業がこの(環境直接支払い)制度の主な受け皿となりました。
【同僚たちと欧州委員会のあるベルギーへ】
ヨーロッパは地続きなので、ドイツのボンからベルギーのブリュッセルまでは経費を節約するために小さなレンタカー(トヨタのヴィッツ:ヤリス)を借りて、スタッフ5人がすし詰めになって高速道路を飛ばして行きました。仕事を終えた夕方に出て、最後は道に迷ったりでその日の夜遅く(2時過ぎ)になんとかホテルに到着。へろへろに疲れましたが、翌日は朝からちゃんと会議に参加しました。そして2日間にわたって会議が開催されたベルギーの老舗ベッドフォードホテルの各会議室には、僕にとっての「オーガニックヒーロー」たちが、あちらにもこちらにもいてつい興奮してしまいました(写真はブリュッセルの欧州委員会が入っているベルレモンビル)。
例えば、最も歴史のある有名なスイスの有機農業研究所(FibL)の所長で、後にIFOAM世界理事の同僚になる「ウルス・ニグリ氏」。これまで自分の修士論文を書く際にお世話になった専門書や論文の著者で業界では有名なオーガニック政策の研究者、ウエールズオーガニックセンター代表で英アベリストウィス大学教授の「ニコラス・ランプキン氏」。エマーソンカレッジの先輩でもある英国最大の有機農業団体ソイルアソシエーションの代表「パトリック・ホールデン氏」などなど。彼らをはじめ、数多くのヨーロッパを代表する有機農業関係者たちが一同に集りました。一緒に行ったIFOAM本部の同僚たちとも、この興奮を分かち合いました。
【有機農業と地球温暖化の関係について】
12月5日の午前中の最初のセッションでは、ヨーロッパの「有機農業とオーガニック食品における行動計画」の見直しについて、ボエル農業・農村振興局委員などによる講演がありました。次のセッションでは、「公共財と政策目的」がテーマになりました。FiBL所長のウルスは、ここ数年間集中して有機農業と地球温暖化の関係について研究を続けています。彼は後半のセッションで「有機農業とオーガニック食品は、どれぐらい気候変動を緩和して、公共財を生み出すことができるか?」というテーマで最新のデータを駆使した講演を行いました。
IFOAMは、1970年代から欧州委員会や欧州議会に対して有機農業に関する政策(有機認証制度や農業環境政策・農村振興政策)導入のためのアドボカシー活動(生産者や消費者にとってより利益の多い政策にするための政策提言活動)を続けてきました。現在、世界で最も発展しているヨーロッパの有機農業やオーガニック食品市場(2007年で農業全体の約4%、市場は約2.6兆円規模)。EUがこの発展に不可欠な「有機認証制度」を1991年に導入するための政策(EEC/2029/91)を策定する際には、EUオーガニック基準の策定過程を含めてIFOAMが大きな影響を及ぼしました。IFOAM・EUグループは、IFOAMの地域組織として2000年からブリュッセルでのアドボカシー活動やロビー活動をメインの活動としています。
【EUの農業と環境の政策担当者が参加】
この会議にスピーカーとして発言をした代表的な参加者を各分野から挙げてみます。政治家としてはEUの共通農業政策(CAP)を含む農政全般の責任者、欧州委員会のマリアン・フィッシャー・ボエル農業・農村振興局委員(農水大臣)や欧州議会の農業・農村振興総局副委員のフリードリッヒ・ウイルヘルム氏(欧州緑の党:写真)。同じく欧州議会議員のディビッド・ハンマーシュタイン氏(欧州緑の党)。農業・農村振興委員会のアドバイザーを務めるハンス・ロレンゾ氏などが参加しました。
EU官僚としては、欧州委員会から農業委員フィッシャー・マリアン・ボエル女史の官房長、ポール・クリストファーセン氏と事務局のジュリアン・モウスニャー氏。農業・農村開発総局(農水省)の農業政策予測分析局長、タソス・ハニオチス氏、有機農業ユニット長ジーン・フランシス・フロット氏や政策官のヘルマン・フォン・ボクセン氏、環境総局自然環境保護本部事務局長のラディスラブ・ミコ氏と政策官のレオナルド・ニコラ氏をはじめ関連部局の担当者が多数参加しました。EUに次いで世界第2位のオーガニック食品市場のアメリカ(2007年の市場は約2兆円規模)からは、アメリカ農務省の米国オーガニック基準委員会議長のアンドレア・カロエ氏が参加しました。
また政府間機関のOECD(経済協力開発機構)からは農業環境局長、ウィルフリッド・レッグ氏らが参加。市民社会組織(CSO)からは、デンマーク消費者委員会の事務局長、ラスムス・キャルダイ氏。国際環境NGO「バードライフ・インタナショナル」のEU農業・農村振興政策担当、アリエル・ブルナー氏らも参加しました。有機農業団体では、イギリスを代表する有機認証団体である「ソイルアソシエーション(英国土壌協会)」代表のパトリック・ホールデン氏や、ヨーロッパを代表する老舗の有機認証団体「デメター・インターナショナル(本部:ドイツ)」副代表でEUコーディネーターのニコライ・フックス氏(2009年3月に来日)などが参加。また有機農業に関するヨーロッパの代表的な研究者たちや、実際に有機農業に取り組む農家も多数参加しました。
【ヨーロッパオーガニック会議の内容】
会議では、この3年半の間に実施されてきた、オーガニック食品と有機農業に関する「ヨーロッパオーガニック行動計画」の内容が評価されました。また、参加者たちはオーガニック食品と有機農業のさらなる躍進をめざして、EU加盟27カ国によるCAPの政策課題について議論し、政策を発展させました。この議論では、オーガニック製品の生産が社会に対して様々な利益をもたらすこと、そのことがEUの政策目標にいかに貢献できるかが強調されました。主なテーマは以下の通りです。
・オーガニック食品と農業が社会にもたらす利益
・CAPの中間見直しにおけるオーガニック食品・有機農業政策
・CAPにおける一貫性のある環境政策の融合と目的
・有機農業に関する雇用促進、革新、競争力アップのための研究
・新たなオーガニック規制:チャンスと課題
・有機認証制度、加工、流通について
【欧州オーガニック会議 分科会のテーマ】
会議はヨーロッパの将来のオーガニック政策ビジョンを作り上げるための会議でもありました。会議の分科会プログラムは、将来の有機農業(オーガニック生産全般)に影響を与える政策課題について議論する貴重な機会を提供しました。欧州レベルの有機農業運動と政策担当者たちの間の会話を促進するために、以下のような5つの分科会が設置され、各分科会にオーガニック商品のサプライチェーンの代表者たちも参加しました。
・ 新しいオーガニック規制について(2009年に有機認証制度の改正)
・ 2013年以降のCAPとこれまでのCAPの予算見直し
・ 有機農業と新しい「農村振興計画(政策)」について
・ 遺伝子組み換えフリーな農業を守る政策について
・ オーガニック食品と有機農業のための研究ビジョン
・ オーガニック食品の信頼性(有機農業の原則と発展するマーケット)
【ヨーロッパオーガニック会議の成果】
IFOAM・EUグループによると、300人を超える参加者が集ったこの会議では、EUの将来の農業政策に対して明確な政治的提案を進展させることができました。そして新たな政策課題が確認されました。また欧州委員会の農業担当委員マリアン・フィッシャー・ボエル氏が参加したこの会議では、オーガニックセクターが直面している将来への課題を確認しました。「それをどうすれば解決できるのか?」そして「オーガニック生産の様々なメリットから得られる社会的恩恵を、政策立案者たちがいかに確実に政策に反映できるか?」が重要であることが確認されました。また、参加した欧州委員会の環境総局と農業総局の政策担当者たち、そして環境NGO代表らは、現在のCAP見直しにおいて最優先事項である環境問題、気候変動、生物多様性の維持、水質の管理において、有機農業の取り組みが貢献できることをしっかり認識しました。
IFOAM・EUグループ代表のフランシス・ブレイクは、今回の会議について以下のように述べました。「常識的には、予防原則に基づく有機農業の土台は、CAPのあらゆる目標を遂行し、欧州市民の希望に適う、投資を正当化される唯一の農業システムです。私たちは欧州委員会に対し、『ヨーロッパオーガニック行動計画』の見直しと改訂を呼びかけます。それはあらゆる農業政策分野を通じて、この有機農業という重要な生産システムを適切に促進するために一貫した政策を打ち出すためのものです。CAPの将来についての今回の話合いは、真剣な行動を起すための重要な機会を提供できました。」
※欧州委員会は、2004年にEU全体のオーガニック食品の普及啓発を含んだと有機農業の更なる発展のための「ヨーロッパオーガニック行動計画」を採択しました。これはEU加盟国(現在27カ国)が合意した政策指針文書です。
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/organic/document/euorgcap.htm
http://www.organic-europe.net/europe_eu/action-plan-eu.asp 英語
IFOAM・EUグループの創設メンバーで元代表のフランシス・ブレイク氏は、英国最大の有機認証団体、ソイルアソシエーションの基準・技術部長でもあります。ブレイク氏は1980年代から長年に渡ってイギリスとEUの有機農業の発展に貢献してきました。
【今後の有機農業に関する活動計画】
会議の結論において、以下の必要な活動計画が確認されました。
(1)有機農業をCAP見直しの一部として展開される環境施策における特定の対象とする。
(2)農村振興資金の増額案について、確実に有機農業が対象とされるようにする。特にこれまで有機農業支援が十分になされてこなかった地域や加盟国を対象とする。
(3)調査・開発・知識を優先することを確認し、焦点を絞ってオーガニックに特化した研究計画やフォーラムの発展をサポートする。
(4)オーガニック食品・有機農業を定義するEU規制の改正プロセスにおいて、利害関係者がより幅広く参加できるようにする。
(5)オーガニック食品の信頼性を、市場の拡大によってそのコンセプトの価値を落とすことのないよう、核心的な価値に準拠して守り維持する。
(6)オーガニック製品は非遺伝子組み換えであることが法的に守られるようGMO政策に向けたキャンペーンを続ける。遺伝子組み換えによる汚染の法的責任は、一貫して汚染者支払い原則に基づくことを明確にする。
(7)急速な原油価格の高騰と近い将来の原油不足の予測に基づいて、オーガニック生産の早急な導入が必要であるという緊急性を確認する。
【ヨーロッパオーガニック会議の総括】
IFOAM・EUグループ事務局長のマルコ・シュルターは、「2004年の欧州委員会のオーガニック行動計画は、良いスタートではあったものの政策の重要な部分が十分に実行に移されず、取り残されることもあった」と指摘しました。また「特に、遺伝子組み換えに汚染されない農業をいかに守っていくか、という問題については取り組まれていない。有機農業をサポートしていくために、調査研究と農村振興政策における欧州の政策には、飛躍的な発展が求められている。」と述べて、「この会議は、政策立案者に対して具体的な提案を示すものとなった。今こそEUとその加盟国は真剣に行動に移さなければならないときだ。」と総括しました。
定員を大幅に超えた参加者が集ったこのイベントでは、オーガニック産業部門がその強さと成熟度を示しオーガニック食品・有機農業が農業全般における政策論争の中心となってきたことを証明しました。また今回のイベントに欧州委員会の官僚や欧州議会議員が数多く参加したことは、EUの政策立案者たちにとって有機農業がいかに重要な問題として認識されているかを示す結果となりました。※ヨーロッパオーガニック会議の詳細:http://www.organic-congress-ifoameu.org
【市民社会がリードし続ける有機農業政策】
今回、僕も初めてEUレベルでのIFOAMのアドボカシー活動の現場を体験しました。40年近い有機農業に関する世界の現場での活動実績と、長い年月をかけて築き上げてきたブリュッセル(欧州委員会)との厚い信頼関係があってこその結果だと思いますが、有機農業に関する政策というか農業全体の方向性に関する政策を、こんなふうに現実に市民社会(NGO)の側がリードしていることに、強い感銘を受けました。ちなみにEUでは、有機農業だけでなく環境政策に関しても国際環境NGOの持つ調査データなどを活用して、市民社会が欧州委員会の政策立案に深く関わっているといいます。http://www.foeeurope.org/links/green10.htm
日本でも、長年にわたって有機農業に関わってきた有機農業団体(NPO)など市民社会が有機農業を推進するための政策提言を続けてきました。その結果を超党派の有機農業推進議員連盟が受けとめてくれて、現場の声を反映した内容の議員立法で2006年12月に「有機農業推進法」が制定されました。
http://organic.no-blog.jp/weblog/2009/07/4_aa9d.html
最後に、オーガニック世界会議2008にも参加してくれた欧州議会の農業・農村振興総局副委員長のフリードリッヒ・ウイルヘルム氏の言葉を紹介します。「IFOAMは持続可能な農業のポジティブな影響についての活発な議論のためのフォーラムであり続けるべきだ。IFOAMは、もっと持続可能な農業の実践を増やすために、その目標と奨励を定めること、明快な認証と表示基準を示すこと、それに地域のマーケティングと公正な競争のための主役であり続けるべきだ。IFOAMはこれまでいつも有機農業政策に関するロビー団体以上の存在だったし、有機認証システムの供給者以上の存在であり続けてきた。有機農業は、地域コミュニティの未来についての議論の指導的役割を担うべきだ。農業(agriculture)のないところに文化(culture)はないはずだから…。」
【ユーロ世代と拡大するEUのオーガニック市場】
僕が、最初にヨーロッパに留学したのは1997年の秋でした。今回、車で地続きでドイツとベルギーの国境を越えて会議に行った同僚は、20代後半~30代なかばのドイツ人・フランス人と中国人の男女たち。若い彼らは、1999年にEUの統一通貨「ユーロ(€)」が導入された後に大学生活を過ごした世代です。つまり初めての給料でもらったのは、「フラン」や「マルク」ではなくすでに「ユーロ」だった訳です。若いドイツ人のクリスティアーナは、「自分はドイツ人だけど”ヨーロッパ人(欧州人)”という意識が強いのよね。」と言っていたのが、さすがユーロ世代だなーと印象的でした。でも、一緒にいたフランス人のジョエルは、自国の文化を大事にするお国柄なのか、自分のアイデンティティーは「断固としてフランス人よ。」と言っていました。いずれにしても「単一(ユーロ)経済圏」として東方への拡大(現在27カ国)と成長が続くEUでは、オーガニック市場がまだまだ順調に伸びているようでした。
【第2回ヨーロッパオーガニック会議2009】
早いもので、2年に一度開催されるこの会議の第2回目が、今年の12月にまたブリュッセル(ベルギー)で開催されます。会議のタイトルは「気候変動、生物多様性の喪失、世界的な食料危機の時代における有機農業とオーガニック食品」です。以下は、公式な会議の概要です。
食料生産は、21世紀に入って深刻な課題に直面しています。食料生産は、気候変動(地球温暖化)に適応しなければならないし、そして生物多様性の喪失を止めることに貢献しなければなりません。同時に世界の人口増加により食料の需要が増加しています。一方で、現在の(農薬や化学肥料に依存する)農法の多くは気候に対して負の影響を与えています。
有機農業は、これらの課題に立ち向かうための解答を提供します。有機農業は、気候変動を緩和(低減)する高い可能性を持っています。そして、有機農業は通常の場合より高い(生物)多様性と高いレベルの農場生態系の機能の知識を示しています。そしてまた気候変動に対してより回復力があるとも言われています。いくつかの研究は、有機農業が異なった生態系サービスの維持に便益があることを証明しています。さらに、オーガニック食品チェーンは、持続可能性の高い食品チェーン実践のための先駆けとして、また実験室として貢献できます。有機農業は、生産者と産業と消費者の間の新しい関係と、新しい経済コンセプトのために貢献することができます。
第2回ヨーロッパオーガニック会議は、オーガニック食品システムがこれらの課題に対応する際に貢献できることを議論するためのスペースを提供します。そして(EUの)共通農業政策(CAP)だけでなく、「他のヨーロッパの政策やヨーロッパの農業が将来の課題に立ち向かう際に適応できるように、いかに変わる必要があるか」という結論を導きます。この会議には、有機農業セクターの代表者や、ヨーロッパの各機関、市民社会(NGO/NPO)、国の関係省庁から約200人が参加者します。
http://www.organic-congress-ifoameu.org/
【欧州委員会の構成】
欧州委員会(European Commission)は、EU(欧州連合)の行政執行機関として法令案の提出、法令の執行、権限の範囲内の事項に関する域外国との交渉及び条約締結、予算の執行という役割を担っている。委員(各国政府の閣僚に相当)の任期は5年(再任可能)で、2007年1月のEU拡大の結果、委員数は2007年1月より27名。委員は事務執行に関し事務局職員により補佐されている。事務局は、各国の中央省庁に該当する36部局からなり、約25,000人の職員を擁している。主なものは総局(Directorate General)と呼称される(外務省HPより)。