オーガニックブログ

2010年01月

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直前のご案内ですが、1月31日(日)にYMCAアジア青少年センター(ワイホール:御茶ノ水)で、“いのち×ローカルな農業・国際シンポジウム”「有機認証ラベルで農業をグリーンジョブにしよう!」が開催されます。基調講演は、スウェーデンを代表する有機認証団体「KRAV」の創設者グンナー・ルンドグレン(Gunnar Rundgren)氏が行います。グンナーは、1972年から世界の有機農業の発展を推進してきているIFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)の元理事長(2000~2005年)も務めました。主催は、国際青年環境NGOのA SEED JAPANです。写真はイタリアのモデナで開催された「IFOAMオーガニック世界会議2008」のガーラディナーでの家族ショット。グンナーと奥さんのカリ(Kari)さん、息子のコルビヨン(Kolbjörn)と同僚でタイ有機農業開発センター准教授のチャイアポン(Chayaporn)博士です。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751389.html

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主催者によると、日本の有機認証ラベルである「有機JASマーク」の認知度は30%程度だそうです。そのことからも、多くの生活者にとって国産有機農産物は決して「身近」ではないといいます。そして、ある有機農家は「日本人は有機農業への理解がとても浅い」と嘆くそうです。今回のシンポジウムでは、多彩なゲストを呼び、「有機認証ラベル」が果たしうる役割とは?「今後の日本農業をどのようにグリーンジョブにしていくべきか?」について考えていくということです(以下はアシードジャパンのHP)。http://www.aseed.org/agriculture/biolocal/team.html

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農水省によると、有機JASマークは太陽と雲と植物をイメージしたマークです。農薬や化学肥料などの化学物質に頼らないで、自然界の力(有機農業)で生産された食品を表していて、農産物、加工食品、飼料及び畜産物につけられています。2001年に導入された「有機認証制度」によって、「有機JAS規格」に適合した生産が行われていることを登録認定機関が検査し、認定された事業者(商品)のみが有機JASマークを貼ることができます。このマークがない農産物や農産物加工食品に「有機」、「オーガニック」などの名称の表示や、これと紛らわしい表示を付すことは法律で禁止されています。

【今年は有機JAS規格の見直しの年】
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有機JAS規格については、1999年の国際的な基準(有機食品の生産、加工、表示及び販売に係るコーデックスガイドライン)の制定を受けて、2000年に「有機農産物及びその加工食品に関するJAS規格」が施行されました。2005年には「有機畜産物及び有機飼料のJAS規格」が制定されました。「JAS法」において、「日本農林規格(JAS規格)」は少なくとも5年に1度見直しを行うこととされています。今年は「有機JAS法」施行から10年になりますので、「有機JAS規格」も平成22年度に見直しを予定されています。それに先立って、2月9日(火)には農水省の表示・安全局表示・規格課による「有機JAS規格に関する意見交換会」も開催されます(僕も委員として参加させてもらいます)。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751440.html

【EU有機認証制度の元祖・スペシャリスト】693cc7bf.jpg

IFOAMは ヨーロッパを中心に世界の有機認証制度をリードしてきました。上記の「コーデックス有機ガイドライン」も1980年に策定された「IFOAMオーガニック基礎基準(IBS)」を参考に策定されました。その意味では、IFOAMの元世界理事長で有機認証に関するスペシャリスト、グンナーによる講演を日本で聞くことができるのはとてもタイムリーではないかと思います。グンナーは、IFOAMが2年毎にブリュッセルで主催する「欧州(EU)オーガニック会議」においても、有機農業に関する検査・認証制度の精度向上と各国政府の有機農業政策について積極的に発言しています。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751431.html

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(以下、アシードジャパンのウェブサイトより引用です。)

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いのち×ローカルな農業・国際シンポジウム
「有機認証ラベルで農業をグリーンジョブにしよう!」
2010年1月31日(日)13:30開場 14:00-17:30
YMCAアジア青少年センター ワイホール(御茶ノ水)
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日本で、「有機農業」を仕事にしている農家の割合を
知っていますか?
たった、1%以下です。
「有機農業」は「環境を保全する仕事=グリーンジョブ」と
言えます。しかし、グリーンジョブは、ただ環境に良いだけでなく、
「人間らしく働ける」ことも意味します。

本当の意味で農業がグリーンジョブになるということは、
自然との調和を目指す「有機農業」を仕事にする人が
それで人並みの生活を営むことができ、
働きがいと誇りを持てるようにすること。

有機農家の割合が少ないのは、
日本がそれが仕事として成り立ちにくい社会だから。
例えば、スウェーデンでは、実に20%の農家が「有機農業」
を仕事にしています。

日本とスウェーデンでは何が違うのでしょうか?
違いのひとつに「有機認証ラベル」があります。
スウェーデンの有機認証ラベル「KRAV」の認知度は98%で
ほとんどの消費者が知っています。
そして、消費者が有機農業について知るきかっけになったり、
環境にやさしい食生活をする一つの目印になっています。

一方で、日本の有機認証ラベル「有機JAS」の認知度は30%程度。
多くの生活者にとって、国産有機農産物は決して「身近」で
ありません。そして、ある有機農家は
「日本人は有機農業への理解がとても浅い」と嘆きます。

今回のシンポジウムでは、多彩なゲストを呼び、
「有機認証ラベル」が果たしうる役割とは?
「今後の日本農業をどのようにグリーンジョブにしていくべきか?」
を考えていきます。

日本をもっとオーガニックにしたい人、農や食に関心のある人は是非ご参加を!

【日時】1月31日(日)13:30開場 14:00~17:30
【場所】YMCAアジア青少年センター スペースワイホール
東京都千代田区猿楽町2-5-5 JR水道橋駅徒歩6分・御茶ノ水駅徒歩9分
【定員】200名 (要申し込み)
【参加費】ASJ会員 500円、学生 700円、社会人 1000円
【主催】国際青年環境NGO A SEED JAPAN
            いのち×ローカルな農業プロジェクト

【基調講演者紹介】
グンナー・ランドグレン氏
有機認証ラベルの第一人者。世界中でも先駆的な有機認証団体であるスウェーデンの「KRAV」の創設者。有機農業を推進する国際的NGO、IFOAM(アイフォーム:国際有機農業運動連盟)の世界理事長を経て、現在は有機農業による国際農村開発コンサルタント会社グローリンクのCEO。http://www.grolink.se/index.htm

【プログラム】
1:ショートスピーチ ツルネン・マルテイ氏(民主党参議院議員)
「日本で作られる農産物の50%を有機農産物に! 」

2:いのち×ローカルな未来 スライドショー
「農業をグリーンジョブにしよう!
~国産農産物の50%が有機になったら、日常はどうなる?」

3:基調講演 グンナー・ランドグレン氏
「スウェーデンの有機認証ラベルが社会を変えた!?
~わたしが有機認証団体KRAVを創設した理由~」

4:20~30代が考える農業対談!
「農業をグリーンジョブにする方法~有機認証ラベルの役割とは?~」

<パネリスト>
笠原秀樹さん(自然農園レインボーファミリー」代表)
有機JAS認証を取得している若手農家(「農事組合法人山武野菜ネットワーク」)
木村 真衣子さん(ナチュラルハウス海老名店 店長)
三好智子さん(有機JJAS認定機関 元職員)
鈴木亮さん(自分の国産有機農産物購入率を上げようとするチャレンジャー)

<コーディネーター>小泉晶子(いのち×ローカルな農業プロジェクト理事)

【申し込み】
下記の参加申し込みフォームにご記入いただき、件名を「いのち×ローカルな農業・国際シンポジウム」と明記の上、E-mailでA SEED JAPAN 事務局までお送りください。

<お申し込みフォーム>
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○お名前(ふりがな):
○職業:
○TEL:
○E-mail:
○ASJ会員:会員・非会員学生・非会員社会人
○イベントへの参加動機、当日知りたいこと
※可能な範囲で当日の内容に反映させていただきます。
○アンケート
1)「有機JAS」を知っていますか?
どんなイメージがありますか?
2)「有機認証ラベル」は持続可能な農業を
推進するために必要だと思いますか?
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※今回ご提供いただく個人情報は、A SEED JAPAN が主催する各種イベント等に関する情報提供とそれらに付随する諸対応に使用させていただく場合があります。取り扱いに関するご質問・ご要望がございましたら、事務局までお問い合わせください。

【主催・連絡先】
国際青年環境NGO A SEED JAPAN(担当:小野・岸田)
〒160-0022 東京都新宿区新宿5-4-23
TEL 03-5366-7484   FAX 03-3341-6030
http://www.aseed.org

A SEED JAPAN(Action for Solidarity, Equality, Environment and Development)とは・・・1991年10月に設立された日本の青年による国際環境NGOです。国境を越えた環境問題とその中に含まれる社会的な不公正に注目し、より持続可能で公正な社会を目指しています。

※本イベントは地球環境基金の助成を受けて開催いたします。

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2010年1月5日(火)の22時からNHKの番組「プロフェッショナル-仕事の流儀-」で、40年間もの長きにわたって有機農業に取り組んできた金子美登(かねこよしのり)さんが紹介されました!
★再放送決定!! 1月11日(月) 24:45~ (※1月12日(火)  0:45~1:35 )
金子美登さんの農場は埼玉県比企郡小川町にある霜里農場です。小川町は池袋から東武東上線で約70分。都内からは約50kmの圏内にあります。

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「現在の霜里農場は、1.3haの農場の敷地内に畑、果樹園、母屋や納屋があり、百数十羽の鶏、合鴨、6頭の牛などが飼われています。四季を通じて多様な作物が栽培され、虫も益虫・害虫がバランス良く棲息し、牛や鶏、合鴨が鳴いています。そして近くに1.5haの田、1.7haの山林があります。(作った)米、野菜、卵を定期的に40世帯の消費者に直接届けるという方法を取っています。その人たちに支えられ、また、その人たちの食を支えるという信頼関係がそこにあります。人とのつながりもまた有機的なのです。」霜里農場のHPは以下の通りです。http://www.shimosato-farm.com/

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子さんの霜里農場で行われているのは「産消提携」といわれる仕組みです。地域の「産地(生産者)と消費者」が直接「提携」して、時には農作業を手伝うなどお互いの顔と顔が見える信頼関係のなかで、消費者が生産者を支えながら有機農産物のやり取りをしています。このような取り組みは欧米でも広がっています。アメリカでは「CSA(地域がささえる農業)」、箱詰めの有機野菜を届ける仕組みは「ボックス・スキーム」(英)と呼ばれています。
http://www.lib.kobe-u.ac.jp/repository/00225625.pdf

※2010年2月20日(土)~22日(月)、神戸学院大学にて、地域における有機農業の生産者と消費者、流通の役割について考える「地域がささえる食と農 神戸大会」が開催されます。21日(日)には、ヨーロッパやアメリカで成長している「CSA(地域が支える農業)」など世界の産消提携の動きを紹介する「産消提携国際シンポジウム(4th URGENCI International symposium)」が開催されます。http://kobe2010.net/jp/index.html

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番組は、地球温暖化による気候変動の影響でこれまでの経験や知恵が活かせない気象条件の中で、ひたむきに自然と向き合い、田んぼや畑に向き合う金子さんを淡々と追ったとてもいい内容でした。そんな有機農業の静かな哲人、金子さんのプロフェッショナルとしての言葉は「ベストを尽くして、我慢する」「作物の“声”を聞け」「困難こそ、楽しめ」です。有機農業の面白さについては…「土を軸にした自然の営みの中の喜怒哀楽です。喜び怒り哀しみを含んだ楽しさというのが農業はあるんですよね。豊作なら嬉しいし、家畜の死と立ち会うと哀しいし、思うように牛がいうことをきかないときは怒るし、そういうのを含めた、土を軸とした、喜び、怒り、哀しみを含めた楽しさが農業にはあるんですよね。」(写真は生活工房「つばさ・游」のHPより)。

農業の匠の技を持った金子さんを紹介する番組は約45分。僕も有機農業に関する広報の仕事を長いことやらせてもらっていますが、有機農業に関する(個人を紹介した番組で)これだけ長い番組は、これまであまりなかったように思います。ただ、金子さんが取り組まれている有機農業に関する他の仕事やその成果の広がりから考えると、それを全部伝えるには45分は短いとも感じました(写真は霜里農場のHPより)。
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金子さんの真摯な、でも本当に遣り甲斐があって楽しそうな農業への取り組み、愛情を注ぎ込んで黄金色に実った田んぼやかぼちゃが鈴生りの畑、水田に放された愛らしい合鴨のひなや牛の出産に立ち会う様子などを見て、今更ながらですが「有機農業ってすごいなー。」と本当に思いました。そして、改めて今まで有機農業の広報を仕事にしてきて「本当によかった!」と思いました。また、これまで自分ではあまり土に触ることなく、メディアやブログを通じて有機農業の良さを伝える仕事をしてきましたが、「いつかは自分でもあんなふうに有機農業をやってみたい。」と初めて思いました(写真はNHKの番組HPより)。

◆以下は、NHK「プロフェッショナル」番組HPの予告文です==========================================================
「命の農場で、土に生きる ~農家・金子美登~

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有機農業の世界で知らぬ者はないカリスマ農家・金子美登(61歳)。埼玉にある農場には毎月100人もの見学者が押し寄せる。 金子は40年にわたり有機農業を貫き今も3ヘクタールの農地で60種類の野菜や果物、米を農薬も化学肥料も使わずに作り上げる(写真はNHKの番組HPより)。

金子の農法は、自然の力を引き出すことを徹底して考えた末に編み出されたものだ。例えば、トマトとニラ、ナスとパセリなど違った野菜を一つの畝に交互に植えることで病気や害虫の発生を抑える。それぞれの“野菜の個性”を生かし育てるのだ。

さらに金子は、自然に負荷をかけない循環システムも徹底して確立している。土は落ち葉やもみ殻などで作り、肥料は、家畜のふんや人間の尿などから作る。さらにはお湯を沸かすガスも、肥料が発酵する時に発生するメタンガスでまかなう。

番組では、春から秋にかけ、金子の農場に長期密着。作物作りの営みを追っていく。16年ぶりの異常気象に見舞われた今年、金子の水田は、日照不足のため発生した“いもち病”に襲われる。農薬を使わずにどう戦うのか。金子が挑んだ秘策とは?

命めぐる農場で繰り広げられる、カリスマ農家・金子美登の格闘を追う。
http://www.nhk.or.jp/professional/backnumber/100105/index.html
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◆「住吉美紀とプロフェッショナル現場スタッフのブログ」より
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…また、畑での植え合わせも、緻密に計算されていた。どの作物の隣にどれを置くかが、有機農業ではミソになる。例えば、ニンニクやネギと、イチゴは、根が絡み合うくらい近くに植える。ユリ科のニンニクやネギの根に、拮抗菌と言って、抗生物質の役割をする菌がたくさん繁殖して、イチゴを病気から守るそうだ。あるいは、レタスとチンゲンサイも、入り交じるように植えている。レタスを、モンシロチョウやコナガなどの害虫が嫌うので、そうした害虫からチンゲンサイを守ることができるのだ。http://www.nhk.or.jp/professional-blog/100/33167.html#more

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金子さんの農場と埼玉県小川町については、LOHASビジネスプロデューサーの大和田順子さんがブログに詳しく紹介されていますのでそちらをご覧下さい。最近、小川町に通い詰めている大和田さんは地元の方と共著で小川町や霜里農場についての本を執筆中だそうです。(写真は中島有里子さん撮影)。http://www.owadajunko.com/archives/2009/10/post_112.html

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金子さんのお隣にいるのは奥様の友子さん。超がつくほどの猫好きで有名です。ちなみにおふたりの結婚式の主賓は金子さん側は公害や農薬の恐しさを書いた小説『複合汚染』で有名な有吉佐和子さん。金子さんの不遇の時代に有機野菜を買って支えてくれたそうです。そして友子さんの方は女性の参政権運動で有名な市川房江さん。すごい主賓ですね。そしておふたりは日本有機農業研究会で知り合われたそうです。http://soratsuchi.com/owada/2009/12/

【霜里農場と有機農業推進法のこと】
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僕が初めて金子さんの農場にお邪魔したのは、2007年の10月でした。会社を休職させてもらって行っていたロンドンの大学院への留学を終えて一時帰国していた時です。その際、毎年東京ビックサイトで開催されている日本最大のオーガニック展示会、「BioFach Japan(ビオファッハジャパン)2007」に参加しました。そこに展示会を特別協賛している「IFOAM(国際有機農業運動連盟)」の本部(ドイツ)から広報担当ニイル・ソレンセン氏(アメリカ)と、当時の世界理事アントニオ・コンパニオーニ氏(イタリア)がふたりで参加していました。折りしも小川町では秋の収穫祭が行われていました。そこで、大学院でIFOAMについて研究していた僕が、初めて日本に来たニイルを金子さんの霜里農場に案内することになりました。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751432.html

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小川町では、金子さんの他にも多くの農家の方々が有機農業に取り組んでいます。収穫祭では、地元で獲れた最高の食材を使った豚汁やおにぎり、茹でたての枝豆など、とってもおいしい食事をいただいた後に、金子さんの農場を見せていただきました。ここでは農薬を使わないからか、キャベツ畑の上にはたくさんのモンシロチョウがひらひらと舞っていました。金子さんに聞いてみると、天候が不順で植える時期を間違えたせいでイモムシが異常発生したとのこと。キャベツのほとんどが餌になってしまったといいます。

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「もう全くいつものような気候じゃないよね。」という金子さんの一言が重く響きました。印象に残ったのは、牛糞や生ゴミなどを使ったバイオガスのミニプラントです。これで畑に蒔く液肥も作って、その工程で発生するメタンがスを調理などの燃料にしているのです。トラクターもナタネ油(バイオディーゼル)で動かしているとのこと。本当に無駄なものがなく、エネルギー面でも自立した、すべてが循環している農場だなーと感心しました。
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農場を見せてもらった後は、栽培した有機大豆を納入している町の豆腐屋さんへ。金子さんの作った豆の味がしっかりする美味しい有機豆腐は人気商品で、お店は大繁盛しているとのことでした。夕食は、地元の食材を使った小さな料理屋で。飲ませてもらったのは、金子さんたちが栽培した有機米を使った自然酒。まだ火を入れていない生酒で、これがまたうまい!

【有機農業推進法はどこで生まれた?】19da290a.jpg

ご一緒したのは2006年末に農水省が「有機農業推進法」を導入したときの責任者、栗原眞さん。当時は環境保全型農業対策室長さんでした。栗原さんと金子さんたちは、自然酒を飲みながら、有機農業推進法ができるまでのことや、これから何をすべきかなど当時を懐かしみながら話されていました。自分でも料理が得意なゲストのニイルは、初めて食べる有機野菜をたっぷり使った料理や日本酒にご満悦でした。

その席で聞いた話では、有機農業推進法ができる過程で大きな役割を果たしたのが金子さんの霜里農場だったそうです。当時、有機農業に対して農業として本当に成り立つのか懐疑的だった農水省の官僚の皆さんが、実際にうまく回っている金子さんの農場に何度も足を運んで、一緒に酒を酌み交わしながら話し合いを続けるうちに「有機農業でもやれる」ことを実感して法案作成に傾いていったということです。まさに百聞は一見にしかず。その意味でも金子さんたちの霜里農場での実践は、日本の有機農業にとっても重要な意味を持っています。

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※「有機農業推進法」は、政府が初めて有機農業を推進することを決めて、全国の各自治体に有機農業の推進を義務付けた画期的な法律です。この法律を作る過程で、40年近く前から有機農業に取り組んできた生産者団体(有機農業団体協議会:当時)や日本有機農業学会、IFOAMジャパンなどの利害関係者が現場の声を積極的に伝えました。有機農業推進法は、有機農業セクターと超党派の国会議員で構成される「有機農業推進議員連盟」(160名超)の協力により議員立法で作られた日本では珍しいボトムアップ型の法律です。http://organic.no-blog.jp/weblog/2009/07/4_aa9d.html
http://blog.livedoor.jp/zen_yu_kyo/

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夕食会の会場となった料理屋のシェフは、1996年の夏に日本有機農業研究会が企画した「オーガニック&エコロジーツアー」の通訳兼コーディネーターだった森実真弓さん。ツアーは、ヨーロッパ(デンマーク・ドイツ・オーストリア)の有機農業や環境施設を視察するとても刺激的な旅で、僕にとってはこれが初めての欧州体験でした。このときに遭遇した欧州の美しい自然と有機農業に取り組む人たちの素朴さに惚れ込んでしまい今に至ります。森実さんとは11年ぶりに再会できて、その上に美味しい料理も堪能させてもらってうれしかったです。ちなみに、金子さんの奥さん友子さんともこのツアーで知り合いました。猫語は世界共通のようで、どこの国に行っても猫がすぐ友子さんになついているのに驚きました。

【金子美登さんと有機農業モデルタウン(事業仕分け)】
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金子美登さんは熟練の有機農家であるだけでなく、日本の有機農業セクターを代表するNPO法人「全国有機農業推進協議会(全有協)」の理事長でもあります。全有協には、僕が常任理事を務めさせてもらっているIFOAMジャパンのメンバーも理事として複数参加しています。http://www.zenyukyo.or.jp/index.html

その全有協が昨年の12月に大活躍しました。12月のエントリーでもご紹介しましたが、昨年末に政府の行政刷新会議が来年度の予算編成に際して“税金の無駄を排除する”ために「事業仕分け」を大々的に行いました。そして、メディアもこれを大きく取り上げました。国民からの支持も高かったこの事業仕分けですが、この時になんと2008年から実施されてきた農水省による「有機農業モデルタウン事業」も「廃止」と判定されてしまいました。
http://organic.no-blog.jp/weblog/2009/12/post_b9fc.html

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上記の有機農業推進法によって初めて約3億円が予算化された「有機農業モデルタウン」は、長年一切の支援を受けてこなかった各地域の有機農業にとって、新規参入者などの受け皿を作るとても貴重な事業でした。2年間で動き出したこの事業は、残り3年間を残して予算がカットされてしまうと、やっと芽を出し始めた地域の有機農業の発展に強いブレーキがかかってしまいます。そこで、金子さんが理事長を務める全有協が中心となって、事業継続のための緊急活動に取り組みました。有機農業および環境保全型農業に関係する流通団体や消費者団体、有機農業団体から多くの事業継続の要請書を集めて、有機農業推進法の産みの親でもある有機農業推進議員連盟の民主党参議院議員ツルネン・マルテイ事務局長にもご尽力をいただき、政府の赤松農水大臣など政務三役および与党の民主党に有機農業支援策の継続を要請しました(写真はツルネン議員のブログより)。
http://tsurunen.cocolog-nifty.com/nikkann/2009/12/post-643e.html

【平成22年度の有機農業を推進する予算】
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金子さんはこの「事業仕分け」騒ぎのときも、小川町の町議会議員として、また農作業の合間の忙しい時間の合間をぬって、全国有機農業推進協議会の理事長として、国会議員さんたちとの交渉や記者会見などで頑張って下さいました。この時には、奥さんの友子さんも動いてくれました。その昔に、市川房江さんの参院選で菅直人さん(当時選挙事務長)と一緒に闘った仲だという友子さんは、結果がどうだったのはわかりませんが持てるネットワークに働きかけて下さいました。

これらの活動を受けて、有機農業モデルタウン事業という形ではありませんが、平成22年度には引き続き有機農業を推進するための「全国段階での有機農業普及・参入促進支援」などの予算がついたようです。その節は、読者の皆様にもご協力いただき大変助かりました。本当にどうもありがとうございました。来年度の有機農業(環境保全型農業)に関する詳しい予算に関しては、以下のリンクをご参照下さい。
http://www.zenyukyo.or.jp/news_list/17.html


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