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9/22に東京国際フォーラムで開催された第3回の「オーガニックライフスタイルEXPO(OLE)」に行ってきました。主催は一般社団法人オーガニックフォーラムジャパン(会長:徳江倫明氏)。会場はとても盛況で、昨年以上に多くの来場者でにぎわっていました。一般の参加者では、子供連れの若い家族や女性の割合も高かったように感じました。会場では、古巣らでぃっしゅの現役とOB/OGの仲間たちにも会えました。らでぃっしゅの環境保全型生産者団体Radixの会は「アニマルウェルフェア」ゾーンをバックアップ。長年の蓄積がある先駆的な取り組みを紹介していました。らでぃっしゅぼーやと大地を守る会を経営統合したOisix(オイシックス・ラ・大地株式会社)も出展していました。今回が初出展の若い人たちも多くOrganicの勢いを感じました!
s-オーガニックEXPO2018村山さん
国際NGO「IFOAM(国際有機農業運動連盟)」世界理事の先輩で、IFOAMジャパン理事長を長年務められた村山勝茂さんとも久しぶりに会えました。そしてFB友達でもある金子友子さん。埼玉県の小川町にある霜里農場を長年にわたって金子美登さん(初代の全国有機農業推進協議会会長)と共に作ってきた大先輩です。農場がある下里地区の「下里農地・水・環境保全向上対策委員会」は、2010年に農林水産祭のむらづくり部門で「天皇杯」を受賞!友子さんとは1996年に日本有機農業研究会が主催して、ドイツやデンマークの有機農場や自然エネルギー施設を巡った「オーガニック&エコロジーツアー」でご一緒して以来のお付き合い。お昼などご一緒しながら、この間のいろんな話を聞かせてもらいました。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751436.html
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また今回は有機農業に関わる関係省庁の担当者の方とも話すことができました。農水省からは生産局の農業環境対策課(有機農業推進班)の方々と。環境省からは大臣官房の環境計画課の方とも。環境省は霜里農場から地域に広がって“有機農業の里”になった小川町で開催されている「小川町オーガニックフェス」などを後援しているそうです。2006年末には金子さんはじめ全国の有機農業関係者と有機農業推進議員連盟の議員の皆さんの尽力により「有機農業推進法」が策定されました。その後、2011年に農薬や化学肥料を減らした環境保全型農業に対する補助金制度「環境直接支払い」が導入されました。※有機農業など環境への貢献度が高い農業への傾斜配分がまだなのが惜しいのですが…。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751446.html
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これはとても重要な政策(農業環境政策)で、ヨーロッパや韓国などで有機農業が広がっている原動力のひとつ(もうひとつは有機認証制度によるオーガニック食品の信頼性確立)ですが残念ながら予算規模がだいぶ違います。EUでは20年前でも数百億円の規模でしたが、日本での今年の予算を聞いたら24億円ということでした。予算増額(と有機農業への傾斜配分)が必要だと思っていることを伝えたところ「(そのことに)納税者の理解が得られますか?」という反応でした。フランスやドイツ、北欧などでは有機農業の環境便益(どれだけ環境に優しいか)や健康面での貢献など広報や普及啓発にも政府から予算がついています。それは有機農業団体などが頑張ってアドボカシ―(ロビー)活動などをした結果ですが、日本でも早く納税者(消費者)に有機農業の支援策に税金を使う(予算をつける)ことに賛同してもらえる状況を作れたらなーと思いました。http://organicgreen.blog.jp/archives/1013751441.html
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【オーガニック3.0とSDGs(国連/持続可能な開発目標)】
個人的に今回興味があったのが「オーガニック3.0とSDGs」です。初回からこのOLEのテーマでもあります。『オーガニック3.0-真に持続可能な農業と消費のために』は、2015年にIFOAMがまとめた文書です。世界の有機農業関係者から広く意見を求めて、有機農業のこれまでを振り返って今後の有機農業の方向性を展望しようとするものです。https://bit.ly/2zudqNj

「オーガニック1.0」は19世紀終わりから20世紀はじめに発展した農薬や化学肥料を多用する近代農業による問題に対して先駆者たちが変革を唱えた有機農業の創生期。「オーガニック2.0」は1970年代に始まり1990年以降続くオーガニック市場の興隆期。パイオニアたちによる有機認証が法規制を伴う制度になり世界に広がった時期です。2015年以降の「オーガニック3.0」は有機農業をニッチからメインストリームの表舞台に出て、人類が直面する飢餓や貧困、気候変動など地球規模の様々な課題の解決に貢献する持続可能な手法として位置づけています。https://bit.ly/2IcCsn6
「オーガニック2.0」を補足すると、この時期にパイオニアである各国の有機農業団体が始めたプライベートな有機認証。その乱立を受けて国レベル、そしてEUおよび世界レベルでの政府によるオーガニック基準が策定されて法制化が進みました(※これにIFOAMが貢献)。グローバルな有機基準、認証制度の普及によって有機農産物への信頼が高まり、世界のオーガニック市場は成長を続けています。その一方で、有機認証を受けるには手間とコストがかかるために開発途上国では認証を受けられない小規模農家もいます。「※国際 NGO の政策提言活動」https://core.ac.uk/download/pdf/144445976.pdf
「オーガニック3.0」では次世代に向けた更なる広がりのために、有機認証を取った一定規模以上の農家だけでなく、ローカルな市場で提携やCSAなどで消費者と直接つながる小規模農家のために「PGS(参加型(有機)認証制度)」の各国での導入などを支援しています。さらにこれまでの枠を超えて、有機農業が開発途上国における飢餓や貧困撲滅、地球温暖化の緩和や生物多様性の保全などにも貢献できると考えて、グローバルな環境問題や持続可能な開発への貢献をオーガニック関係者共通の目標としています。「有機農業の参加型認証制度(PGS)の定義 by IFOAM(国際有機農業運動連盟)」
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この流れは、2015年に開催された「国連持続可能な開発サミット」の合意文書「Sustainable Development Goals(SGDs):持続可能な開発目標」に呼応しています。「誰も置き去りにしない」と宣言された「2030アジェンダ」には、飢餓や貧困の撲滅や気候変動への対応など地球規模の優先課題として2030年までに人類が達成すべき17の目標を設定。150を超える加盟国により採択されました。そして「オーガニック3.0」がこのSDGsを実現することに貢献できるというのが、ここ3回のELOのテーマでした。「※SDGsの17の目標」https://imacocollabo.or.jp/about-sdgs/
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チョコレートやカカオ、バナナや砂糖や伝統的な工芸品など開発途上国の生産者の生産物を、買いたたかずに適正な価格で買う「フェアトレード(公正な貿易)」も世界的に広がっています。レストランからビールにコスメやコットン、太陽光発電などの自然エネルギーからエコ葬儀まで。OLEが見せてくれた「生活全般(ライフスタイル)をエコでフェアでオーガニックなものにしていく」ことが(値段が高いのが問題ですが)持続可能な社会の実現につながること。そのことを目指して、頑張ってしっかり稼げるようになりたいと思った1日でした(≧▽≦) https://www.fairtrade-jp.org/about_fairtrade/

※「オーガニック3.0」は、IFOAM40周年を受けて作成された『有機農業とバリューチェーンの最優良事例ガイドライン(2013)』を策定したシンクタンク「持続可能な有機農業アクションネットワーク(SOAAN)」とIFOAM、そして世界の有機農業運動関係者により作成されました。
☆「オーガニック世界会議2014@トルコ」と「IFOAM40周年記念イベント@ボン2012」